2025/04/19 10:00
„Ceracron“って知っていますか?
Melitta(メリタ)のヴィンテージ食器の沼にはまっている方は、聞いたことがあるかもしれません。ふふふ
「セラクロン」と読みます。
コーヒーのペーパードリップを発明したドイツのメリタ社が1970年代に開発した、ブランドを代表する高耐久の陶器素材です。
今回はこのセラクロンについて、その背景にある陶磁器の知識とあわせてご紹介します。
„セラミック“という言葉の由来
「セラミック(Ceramic)」は、ギリシャ語の「ケラモス(Keramos)」に由来します。
もともとは角笛や飲み物用の器を意味していましたが、後に粘土を用いた焼き物全般を指すようになりました。
古代アテネには「ケラメイコス」と呼ばれる陶工の地区があり、陶芸は人々の暮らしに深く根ざしていました。
陶磁器の分類
現在「セラミック=陶磁器」と呼ばれるプロダクトは、大きく分けて3つ。
陶器(Earthenware)
多孔質で素朴な質感。吸水性があり、比較的低温(1,000℃前後)で焼成されます。
和食器だと、益子焼が有名です。
炻器(Stoneware)
陶器より高温(1200℃程度)で焼かれ、強度や耐水性が高くなります。
和食器だと、信楽焼や備前焼。
磁器(Porcelain)
高温(1250-1400℃)で焼成されるため非常に硬く、半透明で白く美しい仕上がりに。吸水性もほぼゼロです。
有田焼やボーンチャイナはここに分類されます。
これらの違いは、主に原料の配合比と焼成温度によって生まれます。
Ceracronとは?
Ceracron(セラクロン)は、Melitta社が独自に開発した、石器と磁器の特徴を併せ持つ高耐久の陶器素材。原材料の化学組成、混合比、製造工程などは企業秘密です。
エッジの強度が高く、日常使いにぴったり。豊かなカラーバリエーションと、素地の色が透けて見える唯一無二の釉薬(ゆうやく)が大きな魅力です。
当店のセラクロンのシリーズをご紹介していきますね。
Heidelberg(ハイデルベルグ)
メリタの食器といえばこれ!ともいえる定番のフォルム。Ceracron(セラクロン)と聞くと、このシリーズを思い浮かべる方も多いと思います。
Kopenhagen(コペンハーゲン)
その名の通り、北欧デザインを感じるシリーズ。カクンカクンとしたフォルムがなんともかわいい。しっとりとしたカラーで、落ち着いた印象です。
Stockholm(ストックホルム)
パキッとしたビビッドなカラー展開のシリーズ。ソーサーは、中央にカップを固定させる窪みがないので、カップと組み合わせても、単体でも。
Bückeburg(ビュッケブルク)
シンプルだけど、絶妙な形が愛おしくなる。
Ascona(アスコナ)
1960年代、メリタの食器の中でも特に古株。透けるほど薄いので、綺麗な状態で残っているのは貴重!
Katen-Geschirr(カテンゲシア)
ダークブラウンの艶がかかり、オーブン使用に対応している、ドイツで人気を博したシリーズ。
Bangkok(バンコク)
■陶磁器ができるまで
すべての陶磁器製品は、以下の工程を経て生まれます。
1. 原材料の採取と精製(粘土、カオリン、長石など)
2. デザインと成形
3. 一度焼成して「素焼き」に
4. 釉薬がけや装飾を施し、再度焼成
このプロセスにより、個性のあるアイテムが生まれていきます。
セラクロンシリーズもまた、ひとつひとつ異なる表情を持ち、量産品でありながらも、手作りのような温もりを感じられるのです。
色合いとか、形が微妙に歪んでいたりとか、、愛着がわくんですよね。
美しさ、耐久性、実用性を兼ね備えた、当時の技術と美意識をぎゅっと詰め込んだセラクロン。
ヴィンテージメリタが今なお多くの人に愛されている理由が、ここにあるのかもしれません。
メリタのシリーズについて知りたい方は>> 幻のヴィンテージメリタ - コーヒーと楽しむ食器の世界
メリタの歴史について知りたい方は>> Melitta - 一杯のコーヒーからはじまった物語